八女で始める林業暮らし〜後編〜
インタビュー
2021/07/09
チェーンソーで大木を切り倒したり、重機を扱う作業は重労働で危険が伴うことも従事者減少の一因と言えます。現実的な問題として、収入の部分も心配であったりします。
林業家は伐採した木を卸すことによって収益を得ることがほとんど。そのため材価状況に左右されます。国産材の価格が上がればその分収益が上がり、逆に価格が下がれば収益は減少します。
最近(2021年現在)は、国産材の価格も上昇しているので収入面で見るとハードルは下がりつつあるかもしれません。
もう一つの懸念点は住むところです。地方で仕事をしながら暮らすとなれば、一時的な住居ではなく長期的な住居が必要になってくるはずです。空き家バンクで探すのも良いですが、なかなか理想の家を見つける事は難しくリフォームなども考えないといけません。
久保さんも例に漏れず家を探していましたが、運良く民間会社が運営している「里山ながや・星野川」という昔ながらの長屋をベースにした賃貸物件に住まうことができました。
建物のほぼ全てが「八女杉」で出来ており、長屋という昔ながらの造りであるものの近代的な雰囲気を醸し出しています。
「木をただ切るだけじゃなくて、手入れをしながら山を育てながら林業をしていくんです。」
久保さんが今後特に力を入れいこうと考えているのが「自伐林業」という取り組み。
「自伐林業」では個人で小さめの区画を管理し、小型重機を使った壊れない道づくりと間伐施行を行います。
森を育てながら林業を行うので持続的に収入を得ることができ、必要以上に伐採をせず、重機をたくさん山に入れることもないので森林保全にも繋がります。
近ごろメディアに良く取り上げられるようになったSDGsの側面も含んでいるように感じられます。
「ゆくゆくは自分で山をもち、そこを管理しながら林業1本で生活をしていきたいです。」
林業一本で生計をたてることはまだまだ難しく、農業などと合わせて仕事をする「兼業林業家」が最近は増えてきています。
久保さんも、平日は八女の製材所「八女流」で仕事をしながら、土日は林業家として仕事をする「兼業林業家」のスタイルで仕事をされていますが、いずれは林業1本での生活を目指されています。
そもそも山なんて売られているのだろうか、と気になりますが、意外にも山林バンクや不動産屋に山の情報が集まっていました。
山主さん自身が高齢であったり、遺産相続で引き継いだだけで持ち山の実情を知らない、という事が原因で森林の管理が行き届いておらず放置されている山もたくさんあるようです。ほかにも不在村者が山を手放したいと考えているケースもあります。
そういった山と巡り会うことができれば、山主になることもできそうです。
自分で山を持つ、なんてなかなかイメージが湧かないですが、サラリーマンが独立起業して自分の会社を持つ事と同じなのかもしれません。
久保さんの今後の躍進を願い、応援していきます。
取材:久恒裕司、ライター:N.H
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