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陶の里で未来を想ふ~後編~

インタビュー

2021/09/24

決して順風満帆ではなかっただろうが、「鶴見窯元」の歴史と伝統はしっかりと受け継がれてきているようだ。次は、受け継いできたものを未来に託す番になってくる。


「息子が継ぎたいと言ってくれてます。まだどうなるか分からないですけどね。」


父の背中を見て窯を継ぐことを決意した義弘氏と同じように、息子も父の背中を見て継ぐことを考えているようだ。父親としてこれほど嬉しいことはなかなか無いだろう。

(乾燥途中の作品たち)

小石原焼の窯元だけでなく全国的に見ても、伝統工芸の窯元は家族が受け継いでいっているところがほとんど。
世の中には伝統工芸に携わりたと思う方が少なからずいるが、現実として積極的に弟子を求めている窯元はほぼ見当たらない。


義弘氏曰く、「熱意を持って来てくれるのは嬉しいけど、受け入れる側の体制が整ってないことがあるんです。」


弟子の教育をしながら自身の作品を作っていくほどの体力がないということが大きい問題のひとつのようだ。伝統工芸士の職人の平均年齢は高齢になりつつある。そんな中で一から弟子を教育していくことは難しい。彼らが本当に求めているのは即戦力となり得る「職人」なのかもしれない。



(左、削り出し前 右、削り出し後)

一人前になるには相当な時間が必要、弟子の受け入れ体制が整っていない、など壁は大きいが道は閉ざされていない。最初から職人を目指すのは無理でも、伝統工芸に携わる仕事は他にもある。
ネット社会となっている現代では、店頭販売だけで経営するのは難しい。たとえそれが分かっていたとしても、どうやってネットを活用していくかが分からないでいる職人たちも沢山いる。


ホームページを作ったり、ネットショップを構築したりなど、ネットを活用した経営戦略を立てれる人がいれば窯元としても助かるはずだ。
最初から作陶家を目指すのは難しくても、経営のサポートをして販売促進に携わりながら、徐々に職人の技術を学んでいくことはできるだろう。


「鶴見窯元」もネットショップの構築など、販路拡大に取り組んでいるがやはり難しいようだ。つまるところ、餅は餅屋に頼むのが1番。

(鶴見窯元のギャラリー)

伝統工芸を守り、未来に継承していくには職人だけでは難しい。あらゆる面から携わり、皆で協力しながら伝統を守っていくことが出来れば、より良い日本文化の継承ができるのではなかろうか。

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